宴会の席上で,郷土史の話が出たのでぼくはこう語りました。

万葉集にこんな歌があります。

信濃なる 千曲(ちぐま)の川の
細石(さざれいし)も
君し踏みてば 玉と拾はむ

【歌意】信濃の千曲川の小石だって,あなたがお踏みになったら,玉と思って拾いましょう。

 これは,恋の歌ですね。ぼくは,青春時代にこの歌に出会いましたが,千年以上も前の昔の人々が歌った恋心と現代の我々の思いとが変わらないことに驚きました。

 おそらく今の若い人の中にも,彼氏や彼女が落としたハンカチをまるでその人の分身でもあるかのように大事に胸に抱く人もいるだろうと思います。

 郷土史もそれに似たようなものがあります。路傍の何気ないお地蔵さんも,これがぼくらのおじいさんやおばあさんの時代の悩みを救ってもらいたいとの思いで建てられたものだと知ると一度に身近に感じます。

 今までは,ただのお地蔵さんだと思っていたものが,ぼくらのおじいさんやおばあさんはどんな思いでこのお地蔵さんにお参りしていたのだろうかと感情移入してしまいます。それが,郷土史しかも「私の郷土史」ではないかと思います。
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