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浜町と馬見原の初市について
この時期、各地で初市開催のニュースを聞きます。ここ山都町でも、今月24日と25日に蘇陽地区の馬見原商店街一帯で、そして27日28日には、矢部地区の新町正午町一帯で初市が開かれます。

 子供の頃は、春休みと共に訪れるこの初市がとても楽しみでした。露天商だけではなく、ガマの油売りやバナナのたたき売り、ろくろ首、さらにはサーカスまでやって来たことがあります。

 さて、その初市の歴史ですが、中世のころに村や町が形成され、農業や手工業なども発達しました。それにともなって市も発達しました(農業や手工業が発達すると売買や交換する物が増えます。)。

 市とは、物資の交換取引が行われる場所のことです。寺社門前や交通要地に三斎市や六斎市など呼ばれる定期市が開かれました。三斎市というのは月に3回開かれる市のことで、六斎市というのは同様に月に6回開かれる市のことです。

 馬見原では、天和3年(1683)に三斎市が許され、江戸後期になると六斎市が許され、馬見原の古町では5.6.15.16.25.26日が、新町では朔.11.21日が市日だったそうです。

 一方浜町では、7.17.27日の7のつく日がその開催日でした。特に2月7日は初市、7月7日は七夕市、10月27日は大市といって非常なにぎわいを呈していたそうです。当時のにぎわいの様子として矢部町史には「その日は、近在の村々からはもちろんのこと、熊本、川尻、宇土、小川、松橋、八代など平生取引の行われている地方からも商人が集まったし、さらに、日向臼杵藩の那須からも山道をものともせずに出て来て交易していた。」と書いてあります。当時の市は、たいへん賑わっていたようですね。

 現在は車社会になってだいぶ社会の様子が変わってきていますが、数十年前までは、町史に書いてあるように、お隣の宮崎県からも九州山地の山々を超えてこの浜町まで買い物にやって来たようです。なお、町史で紹介されている2月7日、7月7日、10月27日は何れも旧暦ですから新暦だと約1ヶ月遅れとなります。
 
 小一領神社は、昔は新町にあり柳本大明神と呼ばれていました。新町には妙見の大ケヤキと呼ばれる国指定(現在は町指定)の天然記念物がありますが、その根元には湧水が見られます。ここが、柳本大明神の「東の御手洗」です。御手洗というのは、神社にお参りするとき手を洗い口をすすいで身を清める場所のことです。

 一方の西の御手洗は、下馬尾の浜町橋際にありました。今は火事で燃えてなくなりましたが、そこにも大きなケヤキがありました。下馬尾というのは、その柳本大明神の社前を通過する際に下馬したのでそういう地名がついたと伝えられています。現在の浜町の中心部はそのように広いお宮の境内地でした。よって、昔は宮原町と呼ばれていました。

 そんな、境内地の一郭に初めて店ができたのは慶長17年(1612)のことだといわれています。その時の商人の名前も分かっています。愛籐寺の商人孫左衛門と長左衛門をはじめとする人々が愛籐寺からこの宮原に移り住んで店を構えました。その店を構えた場所は、現在の野田病院と千滝川との間の通称下町と呼ばれるところです。

 今述べましたように、愛籐寺には浜町に店ができる以前から愛籐寺城の城下町としての店がありました。慶長17年に愛籐寺城が取り壊されたことにより、城下町にいた商人達が宮原町、現在の浜町に引っ越してきたのです。

 同様に、別当が居た入佐にも店があったようです。現在の潤徳小学校北側の田園一帯です。そこら一帯には上町、下町、塩買所や秤屋などの地名が残っています。

 ちょっこ、話が横道にそれますが入佐には「でごや」と言う屋号があります。江戸時代は、どこにでも自由に店を出してよいわけではありません。特に、農村に店を構えることは百姓の消費を拡大することであり藩にとっては年貢納めに支障を来たらすとして、厳しく取り締まっていました。

 そこで、昼間だけ店を開け、夜は店を閉めて帰ると言ったような、いわゆる出張販売みたいな形で商売が行われ、それを「でごや」と呼んでいたみたいです。漢字をあてると「出小屋」になるのではないかな思います。
 さて、慶長17年(1612)に浜町に店ができて、以後だんだんと発展していくのですが、特に大きく発展した時期は江戸時代の元禄年間です。元禄15年(1702)に横町及び新町ができ、一気に町が発展しました。その原因は、内大臣を初めとして緑川沿いの林業の仕事が増えたからだと言われています。山仕事のためにたくさんの人々が熊本の町から矢部に移住してきました。人が増えれば物もよく売れます。冒頭紹介しました初市を初めとする三斎市が浜町で開かれたのも、このころからではないかと思います。また、このころの浜町には奉行も置かれていました。
田上 彰 Mail 2018年03月22日 08時11分31秒
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