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布田保之助さんの志へのコメント投稿
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> 郷土の偉人布田保之助さんのことは、通潤橋と共に多くの方に知られていますが、その志の原点となった保之助さんのお父さん市平次さんについては余り知る人がいないのではないでしょうか。 > > 布田家は歴代惣庄屋の家系ですが、市平次さんは17歳にして既に父の代役を仰せつかり、18歳の寛政4年には岩尾城に若宮神社を勧請し、阿蘇家代々の御霊を祭られました。岩尾城下に位置する桐原は布田家の知行地で、今日に至るも市平次さんの遺志を継いで桐原の人々によってこの若宮神社(城山神社)は祭られています。 > > 市平次さんはいろいろな仕事を成し遂げられていますが、そのなかでも異色なのが、矢部郷の実測図を自ら測量して作成されたことです。そんな異才をもった市平次さんですが、文化7年2月28日わずか36歳でに亡くなられました。 > > ところが、布田保之助さんの手記には、(実は二十日)と記し「六ヶ年勤上候処病気差起り文化七年二月病死仕候」と記されていると云います。文化7年2月20日、その後の布田保之助さんの生き様に大きな影響を与える事件が生じました。 > > その日は、御船の御郡代役所で各手永の惣庄屋が集まり、郡内の年中行事その他年間の計画について会議が行われました。その会議の中で、市平次さんは、「矢部郷は交通不便なところで、事ある毎に郡の仕事を仰せつかると地元の仕事ができなくなりますので、しばらく夫役を免除していただきたい。免除していただいた分、その夫役を矢部郷発展のために使わさせて下さい。」と申し出ました。 > > 当時、甲佐、御船の川塘が洪水のために崩れると、その割当夫役、災害夫役を出せと言って来ます。御船でも、甲佐でも、鯰でも、沼山津でも日帰りで夫役に出れます。ところが矢部は、菅尾境の安方、長成(現在の清和地区)から行く者は片道だけでも1日かかります。往復2日掛かりです。向こうで10日間の割り振りがされると、12日掛かるわけです。どうしても向こうで寝泊まりして夫役を務めなければなりません。仮に宿賃を浮かせるためにお寺に泊まっても、お礼の夫役奉公をしなければなりません。このように余所の夫役に取られるために、矢部手永では道路の手入れが出来ません。 > > 道路の手入れが出来ないと、当時はすべて駄載ですので、馬の歩幅は、ほとんど変わらないので、馬の足跡で道がガタガタになります。これを「馬しゃっくり」と言います。馬の通る道は、春秋の道普請でこれを削って均して通りやすくします。ところが、その夫役に出る人が郡の夫役にとられ足りないのです。結果、日向往還を初め矢部じゅうがこのような悪路です。悪路であるから、それだけ交通の便利が悪いし荷物も上って来ない。道路に恵まれないと文化も遅れます。市平次さんが惣庄屋会議で川普請のための夫役免除を願い出たのは、このような不合理を無くすためだったのです。 > > 幸いその会議では、爾後矢部手永の百姓は、他手永の夫役に従事することが免ぜられました。市平次さんは、長年の悲願が叶い大喜びで家路をたどられました。途中、日が暮れたので中島の庄屋宅に泊まることにしました。某惣庄屋が、市平次さんの跡を御船から追っかけて来ました。その惣庄屋が云うには、「矢部だけが夫役を免ぜられたことについて他の惣庄屋から不満が生じ、布田氏への仕返しが謀られている。悪いことは言わない、今一度引き返して夫役免除申出を撤回した方が良い。」と忠告しました。 > > その夜、市平次さんは宿泊先の庄屋宅で、夫役免除は矢部手永75ケ村の公の問題、恨みを買うのは個人の問題だと熟慮の上、腹をかき切って自らの命を絶ちました。保之助さんがわずか10歳の年です。藩へは、28日病死と届け後任の惣庄屋は市平次さんの弟・太郎右衛門さんが任じられました。 > > > 保之助さんが父・市平次さんが死んだほんとうの原因を知ったのは保之助さんが叔父・太郎右衛門さんに連れられ御船の郡代へあいさつへ行った帰りだと言います。太郎右衛門さんは、御船甲佐など水の豊かな田畑を保之助さんに見せ万坂峠に至ります。そして、峠から矢部郷をながめながら、「実は。おまえの父はこの矢部郷のために自らの命を捧げて死んだ。」と伝えたと言います。そのとき、保之助さんは「矢部の空へ向かって父上!」と叫んだであろうとおっしゃるのはぼくの師匠である井上清一先生です。 > > 脚色もだいぶ混じっているかとは思いますが、元服を迎えた保之助さんの心には、父の遺志を受け継ぐ覚悟がそのときできたのではないかとぼくも想像します。
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