『狐にだまされた女』 著:甲斐 慶一(山都町)
―人を騙す狐と出会った女性が、心の底に秘めてきた想いとは―
バスを待っているときに偶然隣りあった婦人は、江波がかつて教職に就いていた頃に出会った一人の女性を思い出させた。誰にも打ち明けたことのない人生の秘密を話すために家を訪ねてきた嶋埜という女性。
なぜ彼女は、自らの人生のすべてを江波に語ったのか。
彼女の人生をこのまま自分の胸に封印しておくのは、はたして正しいのか。
時をこえて彼女の記憶が蘇ったとき、江波は新たな疑問の中で懊悩しながらも彼女の人生を思い起こす。
そう、「狐にだまされた女」として生きた、彼女の人生をーー。
一人の女性の独白を通じて家族とは、やさしさとは、生きるとは何かを問いかける絆の物語。