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重要文化財「通潤橋」保存修理工事(2) 石垣の修理を行いました

最終更新日:

重要文化財「通潤橋」保存修理工事 進捗状況 [ (1) ] [ (2) ] [ (3) ]  

 

 

 

1 通潤橋石垣の変状の把握

 通潤橋の熊本地震による被害の一つは、橋の石垣の上部が、地震の振動により外側へずれ、せり出したことです。通潤橋では、地震以前の平成25年に3次元による計測を実施していため、熊本地震により変位が生じた箇所と程度を正確に把握することができました。この調査により、道の駅側(上流側・西面)の石垣で、3箇所のせり出し部位が確認されました。

熊本地震による通潤橋の石垣の変位

図1 熊本地震による通潤橋石垣の変位

地震前(平成25年)・地震後(平成28年)計測データの差分解析結果

 

2 石垣の修理概要

 今回の修理では、最大10cmから15cm程度のずれが確認された2箇所において、手摺石部分の上から2段目までの石材を取り外して、再度積み直しを実施しました。

 なお、通潤橋の石垣には、熊本地震以前より経年変化により長い時間をかけて外側へはらみ出している部分が確認されていましたが、それらの修理は実施していません。通潤橋の石垣は、上から2段目までが手摺石部分で、その下部(上から3段目より下の部分)が橋本体の石垣で構成されています。この手摺石より下部の石垣は、これまで約163年間、修理を行った形跡がなく、建造当初の技術が残されていると考えられます。通潤橋の石垣の修理にあたっては、熊本地震により上部に少し影響が生じたものの、最大震度6の揺れにも崩れることなく、オリジナルの石垣の強度や建造当時の石積みの技術の高さが証明されたこと、また、従来からのはらみ出しの部分がすぐに崩れる危険性が少ないと考えられることから、通潤橋の価値を保存するため、地震による影響が大きかった上部(上から2段目まで)の石の積み直しにとどめ、最小限の範囲の修理としました。

図2 手摺石積み積み直し範囲図(上流右岸) 添付資料 手摺石積み積み直し範囲図(上流右岸) 別ウィンドウで開きます(PDF:1002.1キロバイト)

図3 手摺石積み積み直し範囲図(上流左岸) 添付資料 手摺石積み積み直し範囲図(上流左岸) 別ウィンドウで開きます(PDF:933.8キロバイト)

 

手摺石・通水管の位置関係
※参考図 橋上の手摺石の設置状況

 

 

 

 

※ 上記、修理範囲の考え方については、以下に「修理範囲の決定に至る理由」項目を新設し、詳細を追記しましたので、あわせてご参照ください。(平成30年6月12日更新)

 

3 修理範囲の決定に至る理由

 今回の修理範囲に関しては、国(文化庁)の指導、及び、専門家・地元関係者で組織した「通潤橋保存活用検討委員会」(保存に関する検討部会)において議論を重ね、決定を行いました。

 

◆ 文化財修理の基本方針

 

 通潤橋は堅固なアーチ構造や熊本城の石垣を参考に築かれた鞘石垣(さやいしがき)を有し、江戸時代後期における肥後の石工の高い技術力により建造され、他に類例のない貴重な石橋として国の重要文化財に指定されていることから、その高い価値を損なわない内容と方法とする。(最小限の範囲とし、可逆性のある方法を用いること。また緊急性がある場合を除き予防的措置は極力行わない。)

 

 

◆ 石垣の修理を手摺石部分の上から2段目までとした理由

 

(1) 経年変化による孕み出しの評価

・経年変化による孕み出しは、道の駅側(上流側・西面)の右岸と左岸の双方に存在し、昭和46年、昭和58年より認められている。熊本地震以前に策定した『重要文化財通潤橋保存活用計画』(平成27年3月策定)では、平成22年、平成25年に実施した3次元計測にて経年変化による孕み出しの進行は確認されなかったため、「緊急に影響を及ぼすものではない」という判断を行い、モニタリング等により長期的に経過を観察し、危険性が認められた場合に修理等の対応を行う方針としていた。

・また、平成28年4月の熊本地震直後より実施した定点観測においても、変位は確認されていない。

 

(2) 熊本地震による修理工事の考え方

・熊本地震による変位は、右岸・左岸とも上部に留まっており、(1)と総合して検討した結果、従来からの経年変化による孕み出しがすぐに修理を要するという顕著な緊急性は認められないと判断した。そのため、『重要文化財通潤橋保存活用計画』の考え方に則り、従来からの経年劣化による孕み出しの対応は長期的な課題として取り扱い、熊本地震による変位のみを短期的課題として修理の対象とした。

 

(3) 通潤橋の石垣の評価

・熊本地震により最大で震度6弱の強震に見舞われたが、崩落には至っていない。(強度の高い石垣と評価される。)

・壁石垣の上部より2段目までは「手摺石」と呼ばれ、通常の石垣にある裏込石がなく、横の石垣と堅固に噛み合い自立している。3段目以下の橋の本体構造となる石垣部分では、手摺石以上により堅固に噛み合っていると想定される。

・石垣の耐震性能や強度について、現在においても診断の方法や基準等は定められておらず、科学的な検証は極めて困難。

・解体して積み直しを行うことが必ずしも建造時(オリジナル)の石垣より強度を高めるという保証はできない。

 

(4) 修理履歴

・壁石垣上部より3段目以下の橋の本体構造となる石垣は、過去の修理工事において一切扱われたことがなく、建造当初の姿、技術が明瞭に残されている。また、その内部構造については、実見した例はなく、明らかではない。 

・昭和46年には、今回の修理工事と同様に、左岸上流側の手摺石の一部を手前に引き戻す形で積み直された履歴がある。

 

 

 (1)から(4)の観点での検討を踏まえ、

 

 ” 現段階において ” 修理を行う必要がある最小限の範囲として、熊本地震による変位のうち、手摺石部分(上から2段目)までを対象とし、過去の修理にならい手前に引き戻す方法を採用した。 



手摺石解体状況

写真1 手摺石解体状況(1)[生涯学習課 撮影]
 
 
手摺石解体状況(2)
写真2 手摺石解体状況(2)[生涯学習課 撮影]
※矢穴の痕跡を確認
 
手摺石解体完了
写真3 手摺石解体完了[生涯学習課 撮影]
 
 
手摺石積み直し完了
写真4 手摺石積み直し完了(1)[生涯学習課 撮影]
 
手摺石積み直し完了(2)
写真5 手摺石積み直し完了(2)[生涯学習課 撮影]
 
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