(前回より続く)

 昼食後,最初に訪れたのは入佐区長の村上浩一さん宅です。村上さんは,「矢部手永入佐村」と書かれた旗や「法螺貝」を見せてくれました。両者とも江戸時代からのもので,村の行事の時に使用されていたと言います。

 

 さらに,部屋の奥に置かれた「区長タンス」も見せてくれました。和タンスの中に,代々区長に伝えられた文書で一杯でした。特に,土地と人に関する文書が目につきました。土地については,いわゆる土地台帳や字図そして,それらのもととなる一筆毎の丈量図が数多く収められていました。

 

 人については,世帯毎の名簿に限らず戸籍簿の副本みたいなものまでありました。部落に於いて,人と土地とが,如何に重要であるかをうかがわせるものです。

 

 区長交代毎に,これらの品は,次の区長に引き継がれるとのことです。旗や法螺貝は良いとしても,この区長タンスを運ぶのはおおごとです。区長交代の時は,このタンスなどを担って部落の中を道中するらしいです。万一,火事になったら,何よりもこの道具一式を持ち出さなければと区長さんがおっしゃっていました。そこには,「入佐髭」と称される「入佐根性」,すなわち責任感が強く誇り高い入佐の人たちの気質を感じました。

(次回へ続く)

2021年09月27日更新