この拾穂記を分析した、岩本税先生の「近世の祭礼・諸興業と民衆」-上益城郡矢部手永を中心として-と題する小論文があります。その冒頭に岩本先生は、次のように書いています。

 

 「一般に近世の村・町については、中世に成立した自治性の強い惣村の性格を喪失して、強力な幕藩体制下に組み込まれ、領主支配の末端部に組織化されたとされている。本稿で対象とする矢部手永内の村・町についても、支配の側の意図はそれを否定できないが、一方村・町の民衆の日常生活の実態を追求してみると、民衆は支配側の意図に反して、自治的、共同体的、時には反体制的行動を展開していることを知る」。

 

 さらに岩本先生は「矢部手永内村々・町の民衆が、特に祭礼・諸興業に自らの主体において参加し、企画運営しながら、一種の自己解放を目指した実態」があることをこの著で明らかにされました。岩本先生が、明らかにされたその精神は、現代の八朔祭にも受け継がれているように思います。

2021年12月03日更新